医療費控除
What is|医療費控除とは?
簡単に言うと
医療費控除とは、何ですか?
簡単に言うと「1年間の医療費・介護費が10万円を超えたとき、所得税と住民税が安くなる制度」です。
重要ポイント3選
「医療費」控除となっていますが、介護費用も対象です。
10万円を超えた分が控除の対象となり、所得税と住民税が安くなります。
最大で200万円まで控除することができます。
夫が医療費7万円、妻が医療費3万円のとき、子供が1万円のとき、家族で合計11万円となり医療費控除制度の対象となります。
- サラリーマン
- 還付申告:既に所得税が前年給与から引かれているため
- 医療費控除によって本来支払う必要がなかった分が、後から返金されます。住民税は未払い分は割引きになり、既に支払い済みであれば返金されます。
- 自営業
- 確定申告:所得税・住民税をまだ支払っていないため
- 医療費控除によって支払うべき税金が安くなります。
定義
- タップで確認
-
その年の1月1日から12月31日までの間に自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額(下記「医療費控除の対象となる金額」参照))の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。
国税庁HP
具体例
年収800万円のサラリーマンです。1年間で50万円医療費がかかりました。
そのうち15万円は入院でかかりましたが、加入している医療保険から20万円保険金がおりました。
また、医療費控除以外の所得控除合計額は150万円です。
医療費控除はどうなりますか?
順番に解説していきます!
「医療費総額ー保険金で補填された金額ー10万円」で医療費控除額が計算できます。ただし、保険金で補填された金額(20万円)は、本来支払うべき医療費(15万円)がMaxとなりますので、オーバーしてる部分(5万円)は無視して構いません。
今回の場合、医療費控除額は以下のとおりです。
50万円(医療費総額)ー15万円(保険金)ー10万円=25万円
「年間の収入ー給与所得控除ー所得控除の合計」で課税所得が計算できます。
今回の場合、課税所得は以下のとおりです。
800万円(年間の収入)ー190万円(給与所得控除)ー150万円(所得控除の合計)=460万円
この場合、所得税率は20%になります。
「医療費控除額×所得税率」で返金額が計算できます。
今回の場合、実際に返ってくるお金は以下の通りです。
25万円×20%=5万円
種類
医療費控除に種類はありますか?
医療費控除には次の2種類があります!
- いわゆる医療費控除
- 一般的にイメージする医療費控除です。このページでメインで解説していきます。
- セルフメディケーション税制
- セルフメディケーション税制対象の市販薬を買ったとき、この金額を医療費控除とできる制度です。こちらで解説します。
この2種類は片方だけ利用することができます!両方を併用することはできません!
基本的に、医療費が多い方は一般的な医療費控除を利用することになります!これを利用できない場合、セルフメディケーション税制の利用を検討してみましょう!
このページでは、いわゆる医療費控除について説明していきます!セルフメディケーション税制についてはこちらをご確認ください!
Who|誰が利用できますか?(対象・対象外)
利用できる人(前提条件)
医療費控除はどんな人が利用できますか?
医療費控除は誰でも利用できる制度です!
医療費控除を利用するには、1月1日〜12月31日までの医療費・介護費の総額が10万円を超えている必要があります!
医療費・介護費の総額とは、生計を共にする親族なら合算することができます!たとえば、次の場合は合算することができます!
- 親元を離れて暮らす子供
- 介護施設に入っている親
- など
対象(費用)
医療費控除は、どんな費用が対象ですか?
医療費控除の対象となる費用は、病気やケガ、出産、介護などでかかって然るべき費用です!健康保険が適用になるか(3割負担か)どうかとは、直接的には関係がありません!
具体例を挙げます!
- 病気やケガの診療費・治療費・入院費
- 入院食代も含みます。
- 虫歯の治療
- 治療を目的として歯列矯正にかかる費用
- 出産・通院にかかる一般的な費用
- 治療を目的として整体・整骨院にかかる費用
- 介護にかかる費用
- 病院へ通院するための交通費(公共交通機関によるもの)
- 義手、義足など医療器具の購入にかかる費用
- 治療に必要な市販薬を購入する費用
細かい基準は国税庁のHPに記載があります!以下に掲載していますので、興味があればご確認ください!
- 医療費控除の対象となる医療費(国税庁HPより)
-
- 医師または歯科医師による診療または治療の対価(ただし、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。)
- 治療または療養に必要な医薬品の購入の対価(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)
- (注)平成29年1月1日から令和8年12月31日までの間に支払う特定一般用医薬品等の購入費は、その年中に健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の健康診査や予防接種などを行っているときに、通常の医療費控除との選択により、セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の対象となります。
- 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設または助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)
- 保健師、看護師、准看護師または特に依頼した人による療養上の世話の対価(この中には、家政婦に病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれますが、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません。)
- 助産師による分べんの介助の対価
- 介護福祉士等による一定の喀痰吸引および経管栄養の対価
- 介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
- 次のような費用で、医師等による診療、治療、施術または分べんの介助を受けるために直接必要なもの
- 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの(ただし、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等は含まれません。)
- (注1)電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除き、タクシー代は控除の対象には含まれません。
- (注2)自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金などは、控除の対象には含まれません。
- 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費用
- 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などの規定により都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師等の診療等の費用に相当するものや上記(1)・(2)の費用に相当するもの
- 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合に、おむつを使う必要があると認められるときのおむつ代(この場合には、医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要です。)
- (注)おむつ代についての医療費控除を受けることが2年目以降である場合において、介護保険法の要介護認定を受けている一定の人は、市町村長等が交付する「おむつ使用の確認書」等を「おむつ使用証明書」に代えることができます。
- 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの(ただし、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等は含まれません。)
- 日本骨髄バンクに支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
- 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
- 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導(一定の積極的支援によるものに限ります。)のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金(平成20年4月1日から適用されます。)
対象外(費用)
医療費控除を利用できないのはどんなときですか?
医療費控除の対象とならない費用は、医療・介護においてオプション的にかかる費用です!
具体例を挙げます!
- 美容整形
- 美容目的の歯列矯正
- リラクゼーション目的の整体費用
- 医師等への謝礼
- 病気予防、美容目的のサプリメントの購入費用
- 入院時の差額ベッド代
- 豪華な入院食代
- 高級な出産プランにかかる費用
- 自家用車で通院する場合の交通費
- タクシーでの交通費
- 公共交通機関が利用できない場合は、タクシー費用は医療費控除に含めることができます。
医療費控除に含めることができるか相談したい場合は、税務署で確認しましょう!
When|いつ利用できますか?(タイミング)
いつから(適用タイミング)
医療費控除はいつもらえますか?
還付申告か確定申告かで異なります!
- 還付申告の場合(サラリーマンの場合)
- 還付申告を行った1〜2ヶ月後に返金されます。
- 確定申告の場合(個人事業主の場合)
- 所得税は納める金額が減額されます。
- 住民税はその年の6月から減額されます。
サラリーマンの場合も、住民税がしっかり減額されるので安心してください!
支払い済みの医療費・介護費
医療費控除は支払い済みの医療費・介護費にも使えますか?
使えます!還付申告か確定申告かで異なります!
- 還付申告の場合(サラリーマンの場合)
- 医療費・介護費のかかった年の翌年1月1日から5年以内が申告の有効期限です。
- つまり、2023年7月現在では、2018年1月1日以降にかかった費用なら還付申告を行うことができます。
- 確定申告の場合(個人事業主の場合)
- 毎年2月16日~3月15日に確定申告が必要です。無申告の場合、罰があるので忘れずに申告を行いましょう。
- そのため、前年1月1日〜12月31日までに支払った医療費・介護費が医療費控除の対象となります。
時系列
関連する制度も含めて、利用の順番はこんな感じです!
医療費が高額になった月に利用できる制度です。
年収等によって異なりますが、月の支払い上限額が8万円程度になります。
介護費が高額になった月に利用できる制度です。
年収等によって異なりますが、月の支払い上限額が3〜4万円程度になります。
年間の医療費・介護費の総額が高額になった場合に利用できる制度です。
医療と介護を両方とも利用している場合に利用できます。
医療費・介護費にかかった金額を税金から控除できる制度です。
Where|どこで相談できますか?(窓口)
相談窓口
医療費控除について相談したいときはどうしたらいいですか?
医療費控除について困ったことがある場合は、以下の場所で相談することができます!
- 税務署
- 国税局電話相談センター
Why|なぜ利用するのですか?(メリット)
メリット
医療費控除のメリットは何ですか?
医療費控除のメリットは、納める税金が安くなることです!
既に支払い済みの場合は返金され、まだ払っていない分は減額されます!
健康保険が効かないものでも、医療費控除では対象となる場合がある(出産費用、交通費など)ので積極的に利用しましょう!
デメリット
医療費控除のデメリットは何ですか?
制度自体のデメリットは特にありません!
敢えて挙げるなら、申告の手続きや領収書の保管が面倒なことです!
How|どうやって利用しますか?(申請方法)
申請方法
医療費控除は、どうやって申請すればいいですか?
申請方法を以下のフローチャートにまとめます!
領収書やレシートは提出の必要はありません。しかし、証拠として申告から5年間保管する必要があるので、無くさないようにまとめておきましょう。
必要書類はこちらにまとめています。
税務署へ提出するか、e-taxでオンライン上で提出が可能です。
- 返金の場合
- 申告から1〜2ヶ月後に返金されます。
- 減額の場合
- 支払う所得税が減額されます。
- 支払う住民税が6月以降減額されます。
申請費用
申請するのにお金はかかりますか?
かかりません!
必要書類
医療費控除の申請に必要になるものはありますか?
申請には以下の5つの書類が必須となります!
- 医療費控除の明細書
- 確定申告書A
- マイナンバーがわかる書類
- 源泉徴収票(提出は不要)
- 領収書など(提出は不要)
他にも、状況に応じて様々な書類が必要なることがあるので、市区町村の役場で聞いてみてください!
医療費控除の明細書
確定申告書
確定申告書は、国税庁HPから作成できます!
有効期限
医療費控除の有効期限はありますか?
還付申告には有効期限があります!
医療費・介護費のかかった年の翌年1月1日から5年以内が申告の有効期限です。つまり、2023年7月現在では、2018年1月1日以降にかかった費用までは還付申告を行うことができます。
逆に、2023年中にかかった費用に関しては、2027年12月末まで申告することができます!
確定申告の場合は、毎年2月16日~3月15日に必ず行いましょう!
更新
医療費控除の更新はありますか?
更新はありません!
控除を行いたい場合は、毎年申請しましょう!
所得制限
医療費控除に所得制限はありますか?
所得制限はありません!ただし、次の2点で医療費控除の計算方法が異なります!
- 医療費控除が可能となる最小金額
- 医療費控除における所得税率
医療費控除が可能となる最小金額
一般的に医療費総額が10万円以上であれば医療費控除の対象です!
しかし、その年の総所得金額等が200万円未満の場合、総所得金額等の5%の金額以上であれば医療費控除が利用できます!
つまり、総所得が160万円なら、8万円以上で医療費控除することができます!
医療費控除における所得税率
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
課税される所得金額とは、給与所得控除などを除いた額です!年収とは異なるので注意しましょう!
年齢制限
医療費控除に年齢制限はありますか?
年齢制限はありません!
回数制限
医療費控除は、回数制限はありますか?
回数制限はありません!
対象となる年は、毎回申請することができます!
注意点
医療費控除に何か注意することはありますか?
注意点がいくつかあります!
- 確定申告の場合、申告期間が決まっている
- 毎年2月16日~3月15日です。
- 家族で1人だけ申告する方がお得
- 家族で合算しないと、そもそも10万円に達しないことも多いです。
- 家族の誰が申請するかで受けられる恩恵が変わる
- 収入が高い人が申請すると、計算に使われる所得税率が高くなり、結果的に返金額が大きくなります。
- 逆に、収入が少ない(200万円未満)の人が申請するといいこともあります。通常は、医療費総額が10万円未満だと申告できません。しかし、200万円未満の収入の人(年金暮らしの親など)が申告すれば、10万円未満でも申告可能になるため、医療費控除を受けることができます。
- 医療費控除をするとセルフメディケーション税制は利用できない
- 医療費控除で受けられる恩恵の方が大きいことが多いので、それほど気にする必要はありません。
- ふるさと納税のワンストップ特例が利用できなくなる
- 確定申告をする場合、ふるさと納税も併せて自分で申告が必要になります。年末調整でワンストップ特例を利用しても、再度申告が必要なので気をつけましょう。
- 領収書を5年間保管する必要がある
- 証拠として保管する義務があります。
How Much|いくら得しますか?(節約効果)
「いくら」医療費・介護費が安くなりますか?
医療費控除はいくらもらえますか?
具体例を用いて説明します!
年収800万円のサラリーマンです。1年間で50万円医療費がかかりました。
そのうち15万円は入院でかかりましたが、加入している医療保険から20万円保険金がおりました。
また、医療費控除以外の所得控除合計額は150万円です。
医療費控除はどうなりますか?
順番に解説していきます!
「医療費総額ー保険金で補填された金額ー10万円」で医療費控除額が計算できます。ただし、保険金で補填された金額(20万円)は、本来支払うべき医療費(15万円)がMaxとなりますので、オーバーしてる部分(5万円)は無視して構いません。
今回の場合、医療費控除額は以下のとおりです。
50万円(医療費総額)ー15万円(保険金)ー10万円=25万円
「年間の収入ー給与所得控除ー所得控除の合計」で課税所得が計算できます。
今回の場合、課税所得は以下のとおりです。
800万円(年間の収入)ー190万円(給与所得控除)ー150万円(所得控除の合計)=460万円
この場合、所得税率は20%になります。
「医療費控除額×所得税率」で返金額が計算できます。
今回の場合、実際に返ってくるお金は以下の通りです。
25万円×20%=5万円
How Many|何人が利用していますか?(統計・体験談)
統計データ
体験談
YouTubeコメント
医療費節約チャンネルに届いたコメントを一部ご紹介します!
コメントを書いた頂いた皆様、ありがとうございます!!
Other|関連制度はありますか?
セルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制とはなんですか?
セルフメディケーション税制とは、市販薬の購入費用にのみ利用できる医療費控除です!
セルフメディケーション税制を利用できる市販薬の箱には、こちらのマークがついています!(日本一般用医薬品連合会HPより)
このマークがついている市販薬を購入したときの年間費用が12,000円以上の場合に医療費控除の申告が可能です!普通の医療費控除では、利用には年間10万円以上医療費が必要なので、かなり手頃な金額で申告することができます!
ただし、注意点が4点あります!
- 市販薬でも対象とならないものがある
- 上で示したロゴがついていないものにかかった費用は対象外です。
- 予防接種や会社の健康診断などを受ける必要がある
- 健康のための取り組みをしている人だけが利用できる制度です。
- いわゆる医療費控除は利用できなくなる
- 医療費が10万円未満の人が利用することが多いので、それほど問題になりません。
- 2026年12月31日までの購入費用が対象
- 2022年に5年間制度が延長されています。再び延長される可能性もあります。